富士山の山頂にある白山岳付近にできるsummit fall。過去に私は1回、パートナーの谷垣は2回登攀している。トレーニングとしてもう一度登攀する計画があがり、より困難な挑戦として、海から歩いて富士山の山頂を目指すsea to summitとsummit fallの登攀を融合することにした。行程については海から全荷で歩くこととした。
2月下旬から積雪量と気温の確認を始め、4月下旬の段階で、5月頭には氷が繋がると判断し、5月上旬から中旬の気温が低い曇りの日に狙いを定めた。
決行日の前の週に田子の浦から富士宮口まで登る行程の偵察を実施し、田子の浦から富士宮市街、富士の原生林を経て富士宮口まで安全かつ効率的に歩くことができた。
5月9日
早朝に谷垣と合流し、スタート地点である砂山公園駐車場へ移動、荷物・装備の確認を行う。9:00に出発、海岸から鈴川の富士塚を参拝し、市街地へ出る。富士山を眺めながら舗装路を進むにつれて徐々に道の傾斜が増してくる。15:00頃富士の樹海へ入っていく。5月頭の原生林はまだ踏み跡も明瞭ではなく、道標のテープが頼りとなる。しかし分岐点でテープの間隔が広くなっている箇所もあり、夜間通過するには精神的に負担がある。また所々に動物の骨が散乱しており、やはり夜に歩くにはリスクがありそうだ。何とか17:00頃には舗装された道に辿り着きホッとする。ここからはスカイラインを五合目に向けてひたすら歩いていく。三合目に着く頃には陽も落ち、街の光を見ながら黙々と歩き進め、20:30に富士宮口五合目に到着する。余力があれば八合目まで登って避難小屋でビバークを考えていたが、疲労と眠気に勝てず五合目でビバークをする。
5月10日
2日目は3時前に行動を開始する。疲労と眠気で体が重い。また軽い高山病なのかパートナーの谷垣は体調が優れないようだ。歩き出しが遅れた上になかなかペースも上がらない。七合目で冬靴に履き替え、アプローチシューズなど不要な荷物はデポしていく。風が強くリスクがあったため、八合目避難小屋で少し停滞し仮眠を取った。7:00頃にアイゼンを装着して登り始める。高度に慣れてきたのか徐々に歩くペースは戻ってきて、8:30に山頂に到着する。山頂から見たsummit fallは予測通り見事に繋がっている。9:50 summit fallの取り付きに到着。summit fallの氷瀑は近くで見ると陽が当たり白く輝いていた。かなり脆そうではあるが、気温は低く、弱点をつけば事故なく完登できると判断し登攀の準備をする。谷垣は3回目なので1P目は國井が担当することとなる。
10:15 登攀開始。
1P目 國井:傾斜は強くないが、氷は割れやすく見た目よりも登りにくい。クラゲの集合体のような不安定な氷が続き、崩壊する足場にアイゼンが決まらない、プロテクションも取りにくい。表面の脆い氷を崩して安定した氷を探りながら登っていく。30m程でピッチを切る。
2P目 谷垣:90度近い傾斜でシャンデリア状の氷が続くためハングしており、より強度の高いクライミングを強いられる。時折割れた氷が直撃し、悶絶しながら谷垣がロープを伸ばしていく。弱点を繋げ、40m弱ロープを伸ばしたところでビレイ解除のコールが聞こえる。
3P目 國井:傾斜が終わったところで谷垣がピッチを切っていた。ここからは緩傾斜となるが、氷は岩に張り付いたベルグラでランナーが取れない。慎重に弱点である凹角を抜け、安定した所で谷垣を肩がらみで迎え入れる。
13:30頃登攀を終了。氷の悪さや疲労によりかなり時間を要してしまった。
休憩を取りお釜を周って富士宮口から下山を開始する。疲労と眠気、体の痛みから下山ですらなかなかペースが上がらない。19:30富士宮口五合目に到着する。獲得標高:登り4287m、下り1819m、総移動距離46.9km、行動時間約26時間。長く充実した二日間であった。(記:國井)
記録写真
